糖鎖の生体内での重要性について
身近な例を挙げますと、血液型がそうです。
赤血球にはフコースという糖がアンテナのように出ているのですが、A型の赤血球はフコースにアセチルガラクトサミンが結合しています。
B型の人はフコースにガラクトースが結合しています。
AB型の人は、アセチルガラクトサミンが結合したフコースもあれば、ガラクトースが結合したフコースもあります。
一方でO型の人はフコースのみで、それ以上は何もありません。
ここに挙げたものはフコース以外も全て糖で、血液型は輸血の可否を決めることでもわかるように自己と異物の認識、つまり免疫に大きく関わっていますから、糖鎖の重要性の一つの例になります。
別の例は、精子と卵子の受精です。
精子にはアセチルノイラミン酸、別名シアル酸という糖が同じくアンテナのように出ているのですが、卵子はこれを認識して受精に至ります。
そして受精が成立した時点でシアリダーゼと呼ばれる酵素が分泌され、周囲にやってくる他の精子のシアル酸を片っ端から切断してしまうのです。
シアル酸がないことでその精子はいくら元気が良くても卵子には異物として認識され、受精に至ることがありません。
これによって2つ以上の精子が卵子に入ってしまう重複受精が巧妙に防がれています。
この2つの例だけでも分かるように、糖鎖は非常に重要な役割を生体内で果たしています。
もし栄養素としてアセチルガラクトサミンやシアル酸が不足したらどうなるかは明らかでしょう。