糖鎖の生理学的な意味合いについて
糖鎖とは文字通り糖が鎖のように繋がったものであり、多糖と呼ばれることもあります。
自然界において、これと同じように個々のパーツが多数つながることで生理学的な効果を発揮しているものには、他に核酸とタンパク質が有名です。
核酸はDNAやRNAであり、生物の遺伝情報がそこに詰まっています。
タンパク質はアミノ酸の集まりですが、20種類ものアミノ酸がいろいろな順序で結合することにより、酵素としての働きを始めとして生物の重要な役目を果たしています。
核酸とタンパク質がこのように劇的とも言える形でその効果を示していることに比べると、多糖は地味な役割と考えられてきました。
要するにデンプンなどのエネルギー源となるか、あるいはセルロースなどの形で主に植物細胞の細胞壁となり、骨などがなくても自立できるような構造物となるかくらいしか役割が無いと思われてきたのです。
ですが、最近の研究によって、実は糖鎖も様々な生理学的活性を持っており、生命の維持に非常に大事な役割を果たしていることが明らかになりつつあります。
例えば免疫に関係していることはまず間違いないと考えられており、その古典的な例に挙げられるのが血液型です。
ABO式の血液型は、赤血球の表面に出ている何かによって決まるのですが、その何かとは即ち糖であることが分かっています。
ただ、核酸やタンパク質は、研究者の思い通りにつなげる技術が十分にあるのに対し、糖鎖はそうではなく、そのために研究はあまり進んでいません。